「独立」「逆境に耐える」──店名に刻まれた店主の覚悟
令和7年11月2日、群馬県高崎市下大類町に開業したよりみち喫茶 花きりん。「365日花言葉」で11月2日に当たる花言葉が「独立」と「逆境に耐える」であり、そこから店名が生まれた。響きの愛らしさとは裏腹に、どんな局面でも凛と立ち続けるという決意がその二文字に詰まっている。店主がひとりで営む小規模な喫茶店だからこそ、一杯のドリンク、一枚のクレープに対する集中力は途切れない。
海上コンテナを転用した建物はマイデザインさんが手がけたオリジナル仕様で、初期投資を抑えつつデザイン性を両立させた好例だと感じた。県道24号沿いで高崎駅から車で約15分、砂利敷きの駐車場3台分に加え第2駐車場もある。混雑時には待ち時間が発生する場合もあるが、一品ごとの仕上がりを優先する方針は揺るがない。コンテナの扉を開けた瞬間に木の香りが鼻をかすめ、内装の和モダンな雰囲気に切り替わるギャップが印象に残る。
薄皮もちもちのクレープと”ちょうどいい”今川焼
クレープは派手なトッピングを削ぎ落とし、生地とクリームの配合だけで勝負するスタイルを貫いている。薄皮でもちもちの生地に甘さ控えめのクリームを合わせた一品は、最後のひと口まで重さを感じさせない設計。一番人気のチョコバナナに加え、サラダ系の惣菜クレープも並び、食事利用として選ぶ来店客も少なくないという声が目立つ。甘いものが苦手な層や男性客からの支持が厚い点は、シンプル路線の説得力を裏づけている。
今川焼は一般的なサイズよりあえて小ぶりに成形し、2〜3個を軽快に食べ切れるよう調整されている。生地だけで成立するふんわりした甘みがベースにあり、中の具材は”多すぎない”量に抑えることで飽きを遠ざける。ベーコンクリームチーズのような惣菜系もラインナップに入っており、甘くない選択肢を確保。2026年1月にはうどんメニューも加わり、今川焼とのセット利用で甘味と食事を一度に済ませられる組み合わせが生まれた。
試作を繰り返したオリジナルドリンクと和の茶葉
アーモンドキャラメルラテ、黒蜜きなこミルクティー──いずれも素材の配合を何度も組み直して完成させたオリジナルレシピで、年齢を問わず注文が入る看板ドリンクに育っている。クレープや今川焼との味のバランスまで計算に含めている点が、単品売りの店とは異なるところだろう。本格コーヒーも複数種をそろえ、「ドリンクだけ利用したい」という来店も歓迎している。テイクアウトは全メニュー対応で、車移動が主流のこのエリアではドライブスルー的な使い方をする常連もいるようだ。
玄米茶、ほうじ茶、とうもろこし茶といった日本茶の品ぞろえにも厚みがある。コーヒーを飲まない層や、和テイストの店内に合わせてお茶を選ぶ来店者が一定数いるという。ソフトドリンク各種も用意されており、デザートドリンク一杯だけの利用でも気兼ねはいらない。個人的には、黒蜜きなこミルクティーを今川焼と合わせたときの”和×和”の組み合わせが印象的だった。
カウンター4席とテラス──ふらっと寄れる日常の延長線
店内はカウンター4席のみという構成で、プライベート感の強い空間が保たれている。全席禁煙を徹底し、ベビーカーでの来店にも配慮した動線を確保。営業は11時から18時、定休日は毎週火曜と第2・第4水曜で、支払いは現金とPayPayに対応する。テラス席では季節ごとの外気を感じながら過ごせるため、同伴者との会話が弾むシーンにも向いている。
「コンビニに寄るくらいの感覚で来てほしい」──よりみち喫茶 花きりんが掲げるのは、特別な外出先ではなく日常動線に組み込まれる喫茶店という立ち位置。学生からシニア世代までリピーターが定着しているという話を聞くと、その狙いは着実に浸透しつつあるように映る。混雑していても一品ずつ手を抜かない姿勢が、再訪を促す循環をつくっている。お腹を満たしたいとき、あるいは静かに一息つきたい午後に、ふと選択肢として浮かぶような存在になりつつある店だ。


