香川の郷土料理を吉祥寺で再現する骨付鳥
国産鶏もも肉を秘伝のスパイスに一晩漬け込み、オーブンでじっくり焼き上げる。もも吉 吉祥寺の骨付鳥は、この工程を経ることで皮のパリッとした食感と中から溢れる肉汁を両立させている。香川発祥のこの料理を武蔵野市で本格的に出す店は限られており、ナイフを入れた途端に広がるスパイスの香りと鶏の旨味は、一度食べると記憶に残る類のものだ。豪快にかぶりつくスタイルで提供されるため、箸よりも手づかみが似合う。
鉄板に溜まった鶏の脂とタレを銀シャリおむすびにつけて食べる方法が常連の間で定着しているらしく、「最後のおむすびが本体」という声も目立つ。ビールやハイボールとの組み合わせを前提に味付けが設計されている印象で、スパイシーさの加減が酒を進ませる絶妙なラインに収まっている。個人的には、焼き上がりの香ばしさが席まで届く瞬間が一番印象的だった。注文が入ってから焼くため、提供までの待ち時間も含めて楽しむのがこの店の流儀になっている。
生ビールSORACHIと地酒が揃うドリンク構成
生での提供が珍しいビールSORACHIを常時用意している点は、ビール好きにとって見逃せない。全国各地の地酒や国内外のワイン、焼酎、果実酒まで取り揃え、季節ごとに仕入れ内容を入れ替えているため、訪れる時期によってラインアップが変わる。鶏料理のスパイス感に合わせた酒の選定がされており、料理と一緒に頼むと味の組み立てが一段変わる。飲み放題付きのコースも複数展開している。
骨付鳥を一本ずつ味わう「かぶりつきコース」や、料理をシェアしながら進めるコースなど、利用シーンで選べる構成が用意されている。たとえば女子会で訪れた4人組が、シェアコースで数種類の鶏料理を回しながらワインを合わせる、といった使い方をしている場面は容易に想像がつく。最大14名まで対応できる宴会席があるため、二次会や職場の集まりにも対応範囲は広い。コース予約時に人数や好みを伝えておくと、席の配置も調整してもらえる。
20年超の積み重ねが生んだ手作りのおばんざい
骨付鳥だけの店ではない。朝採れの野菜を仕入れ、素材の持ち味を生かしたおばんざいや季節の一品料理を日替わりで並べている。20年以上にわたって創意工夫を重ねてきた厨房から出てくる料理は、あっさりしたものからボリュームのある皿まで振れ幅が大きい。メニュー構成が訪問のたびに変わるため、通えば通うほど新しい味に出会える仕組みになっている。
「何回来ても同じものがない」「おばんざいだけで飲みに来る価値がある」という声が複数のレビューで見受けられる。鶏料理の専門店という看板を掲げつつ、脇を固める小皿の完成度が高いことで、食事目的の来店にも十分応えている。老若男女を問わず受け入れる懐の深さは、メニューの幅広さに直結している部分が大きい。季節の食材を使った限定メニューは、入荷状況次第で早めに終了することもある。
カウンター17席を含む全31席の居心地
木を基調にした内装とやわらかい照明のもと、全31席が配置されている。カウンターが17席と多めに確保されているため、一人飲みの客が自然に溶け込める空気がある。吉祥寺駅北口から徒歩約5分という立地ながら、通りから一本入った場所にあり、外の喧噪とは切り離された空間で過ごせる。肩肘張らずに座れる距離感が、デートにも仕事帰りの一杯にも合う。
帰り際にカイロを手渡すという細かい気配りがあると聞いて驚いたが、こうした小さな積み重ねがリピーターの多さにつながっているのだろうと感じる。「また来たい」と思わせる要素が料理の外側にもちゃんとあるのは、飲食店として侮れない。大人数での宴会から一人の晩酌まで、席の使い方に幅を持たせている設計は合理的だ。予約なしでも入れることはあるが、週末は事前に席を押さえておくほうが確実だという声が多い。


